海洋深層水の利活用について考える

10月19日から20日にかけ佐渡で開催されている海洋深層水についての研究発表などを行う海洋深層水利用学会全国大会の海洋深層水2023佐渡大会を前に、10月18日その利用者らによる懇談会が開かれました。

一般に海洋深層水は、太陽の光が届かない200mより深い海水のことで、特徴として年間を通し水温が低いことや、ミネラルバランスがいいことなどが挙げられ、2004年からその取水に取り組む佐渡を含め、国内では15か所で活用されています。
10月18日は、海洋深層水を取水する事業者や利用者らが活用方法などを紹介し合う懇談会が開かれました。
はじめに主催者である海洋深層水利用学会の会長でもあり学識者の大塚耕司さんによる、「なぜ今世界にとって海洋深層水が必要なのか」と題した基調講演が行われました。

大塚さんは、世界人口が80億人と増加している中、水や食料といった資源が不足することなどに触れ、陸上の数倍という膨大な資源量がある海にシフトしていく必要性を訴えました。
また、海洋深層水は温度差を利用して発電が可能であることから、再生可能エネルギーの一翼を担うとし、持続可能な社会を構築するためには、社会基盤として海洋深層水の資源利用は、必要不可欠であると講演を締めくくりました。
その後、取水する事業者が考える海洋深層水の利活用方法などが紹介されました。現在、佐渡市でも畑野地区多田で海洋深層水の取水施設を運営しています。

島内では、飲料水などの販売や宿泊業者らが海洋深層水をお風呂などに利用しています。また、漁業では、海洋深層水の氷を使うことで氷が溶けにくく、魚の鮮度が通常の氷に比べ長く保てるということや、農業用としても使われており、りんごや稲の苗に撒くと生育が早くなる、リンゴが甘くなるなどの報告もあるといいます。
そのため、市の職員は是非島内でも様々なものに活用してもらいたいと話していました。
続いて、30年以上前に日本で初めて海洋深層水の取水を行った高知県室戸市の取組みやカキやサクラマスの陸上養殖に取り組み、地域活性化を図る富山県入善町の取り組みなどが紹介されました。

そして、最後に取水量日本一を誇る沖縄県の久米島海洋深層水協議会の鷲足恭子さんが自分たちの取り組みを説明しました。
久米島では、海洋深層水と表層水の温度差を利用し、CO2を排出することなく発電できる海洋温度差発電の取り組みに力を入れています。
そして、鷲足さんは発電後の水を活用し、不可能とされてきたカキの陸上での完全養殖に成功した事例を紹介しました。

この日、参加者らは海洋深層水の可能性についてより理解を深めていました。
なお、海洋深層水2023佐渡大会は、10月19日から20日にかけて開催され、それに付随して開催場所のあいぽーと佐渡では、21日土曜日に海洋深層水に関連したミニ実験や工作展示などが一般向けに開催されるということです。

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