茅葺き建物継承へ 茅活用プロジェクト

茅葺きの建造物を継承するため、茅の活用を考える講習会が開催され、参加者は基礎知識からその活用方法などについて学びました。

この取り組みは、一般財団法人佐渡文化財団が主催したもので、島内の貴重な茅葺きの建物や技術を残そうと、これまでにも茅の活用についての勉強会や茅刈技術について知ってもらうワークショップなどを開催してきました。
今回の講演会ではまず、佐渡市世界遺産推進課文化財室から佐渡の茅葺き建物の現状や課題について報告されました。
島内には33件、44棟の茅葺き屋根の建物がありますが、そのうち15件は指定文化財です。

文化財保護法では、指定文化財の保存修理は原則所有者の務めと定められていて、維持管理は所有者の大きな負担になっています。
修理のための費用は、補助金もありますが、事前手続きや様々な書類が必要なことに加え、申請に時間もかかることから使うハードルを上げています。
また、補助金があること自体があまり知られていないなど、現状の課題について説明されました。

そして、貴重な茅葺き建物を継承していくためには、材料である茅の安定的な確保と修理技術の伝承が必要だとして関係者が連携して取り組んでいかなければならないと締めくくりました。
次に講演が行われ、今回は一般社団法人日本茅葺き文化協会の上野弥智代さんが、茅の基礎知識から他地域での活用事例などについて話しました。
上野さんは、茅は材料の名称でありススキ=茅ではない。ススキやヨシが日本でよく使われている茅であると基本的な知識について説明し、ススキはCO2の吸収力が高く、環境保全の面からも見直されているとしました。

また、全国の現状について説明し、茅葺きの建物はかつて500万棟あったが、今はおよそ3万棟に減少し、茅葺き職人も2022年時点で日本におよそ200人。そのうち80歳以上が半数で職人の高齢化や減少も進んでいるとしました。
そして、日本や世界各国で行われる、茅葺き建物の様々な活用例を紹介しました。民宿や農家レストランなどに活用するための法整備も進んでいるとしたほか、自治体独自の条例を制定する例や、活用のためのパンフレットを作成した例、また佐渡の茅を維持するための取り組みなど、先進地の事例を紹介しました。
上野弥智代さん「佐渡には本当にたくさん残ってるんだなっていうことを改めて知りました。その多くが寺社や能舞台というもので、文化とともにきっと守られているんだろうなと思いました。全国でもまとまって残っている非常に貴重な地域だなと思いました。材料の確保が少しでも島内でできて、その場所と人がいろいろ関われるような仕組みと利用ができればいいのと思いました。」

佐渡文化財団は、今後も茅葺き建物の継承に向けた取り組みを行う予定で、12月には茅刈りのワークショップが計画されています。
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