「佐渡島の金山」世界文化遺産登録 「情報照会」勧告 関係者が複雑な心境吐露

世界文化遺産登録を目指す佐渡の金山について、ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議イコモスが「情報照会」という評価結果を通知したことが6月6日の夜、文化庁から発表されました。

登録にふさわしい「記載」の次の評価に当たるもので、追加情報の提出を求めた上で、来年の世界遺産委員会以降の審議に回すのが適当と勧告しています。

「記載」勧告を期待していた関係者は一様に落胆の色を隠せませんが、政府は7月のユネスコ世界遺産委員会に向け引き続き登録を目指すことを表明しています。

イコモスの勧告を受け、渡辺市長は悔しさをにじませながらも、7月の世界遺産委員会での登録を目指し、国・県と共に取り組むことを力強く述べ、改めて関係者および市民に協力を呼びかけました。
30年にわたり世界遺産登録に取り組んできた佐渡を世界遺産にする会の中野洸会長も落胆の色を隠せません。
パリに二度足を運ぶなど佐渡金山の文化的価値を積極的に訴えてきた花角英世知事も慎重に言葉を選びながら今回の勧告を受け止め、登録の実現に向けて7月の下旬に予定されている世界遺産委員会でしっかりと国や佐渡市とも連携しながら委員会の委員国の理解が得られるように取り組んでいきたいと述べました。
イコモスによる「情報照会」の勧告は、佐渡の金山が世界遺産登録を考慮するに値すると一定の評価をした上で追加の情報を求めています。
提出を要求している情報のひとつが推薦対象時期の江戸時代より後の証拠が大部分を占める相川上町の北沢地区について、資産範囲から除外することです。
また、採掘ができる権利を有する鉱業権の所有者が、推薦資産または緩衝地帯で商業採掘を再開しないという明確な約束です。
これについて、現在鉱業権を所有するゴールデン佐渡の鈴木社長は、7月の登録に期待を寄せた上で、今後関係機関と協議していきたいと述べるにとどめました。
6月7日、この日も修学旅行生など団体客でにぎわう史跡佐渡金山。大型連休以降、多くの観光客が足を運んでいます。
一方、イコモスは、追加的勧告として、工業採掘が行われていた全ての時期について全体の歴史を包括的に扱う説明、展示を行うよう求めています。これは、朝鮮半島出身者による強制労働があったとして登録に反発する韓国への配慮とも受け取られる内容です。
渡辺市長は、これらは外交上の特性が大きいとし、国が一定程度の方針を示したうえで地元としてできることは取り組むといった姿勢を示しています。
花角知事もこれまで登録とされていた案件にも追加的勧告はあったとして冷静に受け止め、勧告内容を精査した上で対応していきたいと述べています。
いずれにしても政府は、7月のユネスコ世界遺産委員会での登録を目指すことを表明していて、市長や関係団体も地元の熱意を伝えようと意見交換できる場や要望書提出などのタイミングを計っていきたいとしています。
昨年の世界遺産委員会では、イコモス勧告で「情報照会」と評価された文化遺産が6件全て登録になっている事例もあり、委員会開催まで6週間と迫るなか、国や県、市が一体となって粘り強く登録実現に向けて取り組むことが望まれます。
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